本研究室では、次世代光デバイスへの応用を目指して、半導体などの発光材料の開発や新奇発光物理現象の探索に下記のような関する研究を進めています。
1.半導体ランダムレーザーに関する研究
(超低コストレーザー光源の実現に向けて)
光波長程度の不均一な形状を有する微粒子等のナノ・マイクロ構造には、ランダムな強い光散乱を生じます。このような構造と光利得材料を組み合わせることで、高密度光励起下においてレーザー発振現象を示すことが知られています。このようなレーザーは、ランダムレーザーと呼ばれ、精密に制御された共振器を必要としない簡易なレーザー光源として注目されています。ランダムレーザー光は空間コヒーレンシーが低く、イメージング用光源としても期待されています。ランダムレーザー発振は、散乱体である誘電体微粒子と発光有機色素分子用いた系、散乱体と光利得媒質を兼ねたワイドギャップ半導体の微粒子などの様々な材料系で確認されています。本研究では、レーザーデバイスへの応用可能なワイドギャップ半導体で構成されるこれまでにない新たなランダムレーザー媒質の創出を行っています。また、他のナノ構造とカップリングした系におけるランダムレーザー発振の諸特性の改善を行うことで、新奇レーザー光源への応用も目標としています。
2.半導体ナノ結晶発光材料の開発、発光物性の評価
(環境に優しい発光デバイスの実現に向けて)
半導体ナノ粒子は、高発光効率・サイズによる発光波長の制御性から次世代の発光材料として注目されています。特にSiナノ結晶は、無害で地殻中に豊富に存在する材料であり、量子サイズ効果による発光の高効率化のため発光材料への応用が期待されています。本研究では、化学エッチングにより形成される多孔質シリコンを出発材料とした、Siナノ結晶コロイドの低エネルギー大量生成プロセスの開発と、その物性制御に関する研究を行っています。
3.新奇金属ドープ無機蛍光体の開発
(白色LED、放射線センサへの応用)
白色LEDは、主に青色LEDと無機蛍光体との組み合わせにより白色光が実現されている。そのため、演色性や青色光の変換効率の向上のため、高効率で様々な発光色を呈する新奇無機蛍光体の開発を目指した研究が盛んに行われています。本家球では、Mnイオンを発光中心としたフッ化物蛍光体、Euイオンなどを発光中心とした酸化物緑色・赤色蛍光体などの新奇無機蛍光体の開発を目指しています。また、イオン間の相互作用の制御による新奇光増感剤の開発も行っています。
4.プラズモニクスによる光材料の発光制御
(発光デバイスの効率改善を目指して)
金属ナノ構造は、近傍に存在する発光体に、表面(界面)形状に起因した特異な光学効果を及ぼします。例えば、金属内の自由電子の集団振動とそれに伴う電磁場とが結合して、表面に沿ったモードで伝搬する表面プラズモンは、電磁場の局在と増強効果により、蛍光体の発光量子効率の増大をもたらします。また、表面構造を制御することで、局在した電磁場のエネルギーを光として様々な方向に取り出すことを可能です。以上のように、表面プラズモンの電場増強効果を、様々な光学分野へ応用する技術のことは「プラズモニクス」と呼ばれ、近年、非常に注目されています。本研究では、金属ナノ構造の持つ表面プラズモンによる増強効果などの、特異な光学効果を利用して、種々の光材料(化合物半導体、希土類イオン、シリコンナノ結晶、有機分子など)の発光機能の制御を目指しています。